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おじさんの忘れられない味

GHQ風煮込みハンバーグ

ポークビンズ

かんたん夏風 豚肉の生姜焼き

ポテトステーキ

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おじさんの忘れられない味

グラスの写真   私の生まれたのは1950年です。
父は私が物心ついた頃、 神奈川県横須賀市の米軍のキャンプでコックをしていました。

そのせいで私は小さい頃より、当時あまりメジャーでなかったハンバーグや パットローストビーフ、ローストチキン、ポークビンズ等を食べ、 飲み物はレモネードやコーラでした。 もちろん私が好きだった我が家の小麦粉とカレー粉を よく焙煎した独特の香りがするルーと鳥ガラスープをベースにしたカレーや肉ジャガを よく食べました。

また、家が海に近かったもので、休みの時など 父や叔父さんに連れられて魚釣りに出かけました。私が覚えているのは、 ハゼをたくさん釣ってきて、それを焼いてカゴに入れて陰干をし、 それをお正月近くになると、醤油、ざらめ、酒、みりんで一晩煮続けて作った、 ハゼの甘露煮は骨まで柔らかく絶品の味でした。

その後、父が亡くなって以来一度もそれらの味にふれていません。何度かその味を求めて、 試行錯誤しましたが、結局のところ現在もその味を再現する事はできませんでした。 その中でも唯一近づけたのが、煮込みハンバーグでした。

あれから35年、外食産業はフランチャイズ化し、また家庭料理も調味料も含めてインスタント化して 没個性的な味付けになってきていっているのが現状です。そこで私は少しずつではありますが、 私の幼い頃の家庭の味を、記憶をたぐりつつ、ご紹介できたらと思っています。

おじさんの父の歴史

出征前の父の写真。昭和13年
  父の召集令状が1938年(昭和13年)にきました。そして、北支派遣軍に入隊しました。 中国、内モンゴル地区、北支那方面を中心とし、2年間歩兵として任務についていました。 その後、どういう訳か英語が話せたため、下士官の通訳として新聞記者や、イギリス人や現地の有力者との 交渉にあたりました。

  1940年(昭和15年)北モンゴル地区に遠征に行き、父がトラックに乗り、帰って来た所を待ちぶせされ、 銃撃にあい、あわててトラックから飛び降りました。一回転し、中腰の状態で双眼鏡で敵を見ていたところ、 右大たい骨付け根付近から、逆側の対角線上仙骨の横まで貫通銃創を負い、 「あと、5ミリずれていたら、お前は生まれていなかったよ。」と後に聞かされました。

  その後東京の第一陸軍病院へ入院しましたが、ドイツで開発された脊髄造影剤のトロトラスト (トロトラストミエログラフィン) つまり二酸化トリウムを注射され、放射能が体内に残ってしまいました。体内被爆の状態です。 父は1967年(昭和42年)までその事を秘密にしていました。後に、厚生省はその事実を認め、1977年(昭和53年)に 父が心筋梗塞のため死亡した際、何となく不思議ですが、戦死扱いになりました。

横須賀GHQキャンプで同僚と父 基地のジープ 基地で父と犬が仲良し
私の父と友人です。 この写真を見ると グレン・ミラー楽団の代表曲"In The Mood"を思い出してしまいます。 友人のジミーはその後、朝鮮半島に出兵したそうです。 キャンバスのジープです。毎日米軍が送迎してくれました。私も乗せてもらった事を覚えています。 左上に米海軍の補給艦が見えます。 父と横須賀のキャンプの中で飼われている犬です。
米国タンカー船にて料理中の父
米国タンカー船にて料理中の父です。
私が育った長屋共同体      職場までバイクで通った父
我が家(横浜市中区富士見町)がGHQに接収され、磯子の八幡橋の長屋で住んでいました。まさに 子ども社会のコミューンでした。      父は朝鮮戦争中、1957年横浜港でスーベニアに転職。当時まだ珍しかった外装三段の自転車に乗り、 気が付くとホンダベンリー125ccに乗っていました。TVからは "Route 66!"や"ローハイド"、"サンセット77"の曲 が流れていました。

  私が父や、父の友人のジミーや当時の人たちの事を考えた時、戦争は、社会的及び経済構造の歪みから生み出されてしまう必然であると感じますが、 しかし、その結果、戦勝国であれ、敗戦国であれ、全員が傷つき、心のどこかでフラッシュバックを起こし、苦しみ、その事を内在的に一生背負って生きていく、 悲惨な出来事だと痛感しています。

  ちなみに当時の雰囲気を味わいたい方は2003年、阪本順治監督の『この世の外へ クラブ進駐軍』 萩原聖人・オダギリジョー 出演の映画をお勧めします。 地味で感情を押さえぎみの映画ですが、クオリティが高い作品だと私は思っています。よかったらごらん下さい。

  最後に余談となりますが、おいしいものは、思想、心情、宗教(宗教の教義の決まり上、食べられないものがありますが)、 経済に関係なくおいしいものは、美味しいのです。

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